ラクダ様(オフィスVer.)

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 これ誰っすかね? 
 昼下がり。休日出勤者だけの閑散としたオフィスの反対側の島で、声が上がった。
「ラクダ様? って何だ」
「昨日の当番は向坂っすね」
「ってかお前、なんで、朝すぐに気がつかねえんだよ。要折電のクレーム案件だったらヤバイだろ。畜生、向坂に電話してバカンス気分をぶっ潰してやる」
 私の周囲には同僚はいない。東京砂漠。離島。オアシス、などという言葉が胸をよぎる。
「あ゛~ 電源切ってやがる。あいつエジプトだっけ?」
「じゃ、ヒトコブかもっすね」
「ラクダ一口メモなんざどーだっていーんだよ」
 ヒトコブとフタコブが交雑するとヒトコブハンラクダとなるが子孫を残せない…
 あっ、という声がした。
「これ、テ・ラ・ダじゃないっすかね?」
「バカ。まだ早いよ。こういうネタは、5時ギリギリまで引っ張るんだよ」
 私は、ラクダに関する問い合わせでもこないかなと思いながら、大きくノビをした。
その他
公開:19/05/05 10:36

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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