『頑張って』を別の言葉で言うと、

他人の笑顔を見るのが苦痛になってきた。デパ地下の販売員になんて、何でなったんだろう？　他にやりたいこともなくて、偶然見かけた契約社員募集に応募したら、採用されて１年経つ。理不尽な客に会うことも多く、この仕事を続けるべきか、毎日考えていた。
母親と４、５才位の女の子がやってきた。私は必死に偽の笑顔を作り対応する。と、女の子が私の顔をじっと見つめて、ふいに
「おねえちゃんって……」
と言ってきた。私は身構えた。以前子供に『男みたい』と言われて傷ついたことがある。
「おねえちゃんって……お姫様みたいだね！」
「え……」
母親が照れ笑いをしながら、女の子の手を引いて帰っていった。女の子は、お姫様が出てくる映画のキャラデザが入ったポップコーンの容器を肩から下げていた。映画の勢いで言っただけなんだろうけど、なんだろ、この心が癒されていく感じ……。
こんな幸せな瞬間もあるなら、もう少し続けてみようかな。