桃太郎は赤い

一見意味不明のメモがあった。
愛子は瓜実顔をかしげ、斗真と行くスーパーサカタの、本日の特売品を拾いながら、チラシの裏を擦っていたペンの尻を、顎の先へ持ち上げた。
ヘタはあまり変わらないけれど、りんかなら少し小ぶりで、かっちりした感じ。ファーストがもっと尖ったライン。瀧井桃太郎ね、気付いて笑う。

『桃太郎は金もある』
意地を張って下に書いてみる。お堅いとか、お高いとか言われても、こればかりは持って生まれたものだから。
フルーツほど甘くもない。けれど、しっかりした深みはあるつもり。
日曜はカレーの日。でも、今夜はハヤシライスにしましょう。
買い物カゴ、メモにルーとトマトを追加し、愛子はエプロンの蝶々を解いた。斗真とキャロルのレッドが玄関で待機中。
真っ赤に熟れた旬のごほうび。きっと、太陽を丸かじりした様な味でしょう。