辞書ロック・ホームズ

小口の中央やや下、手垢の黒ずみ。ページの下は香色、上は生成り。版数からして二十年以上経過し、陽焼けが薄い。夜に開く事が多い、もしくは昼も窓を閉める率が高い。生活は規則的。

か、さ、た辺りで親指の幅が判る。関節が長く指先は丸い。裏の見返しの上から五分の二、左下隅、表は下から五分の一、それぞれ跡がある。基本右利きだが左も使う。見返しと遊び紙の間に指を挟む癖。手の長さは辞書の縦とほぼ同じ。身長は平均よりわずかに高い。
天より地が明らかに荒れている。椅子に座って脚の上で開く。その距離が丁度良いなら、年代的に老眼ではないから、軽度の遠視で推定裸眼。体型は中肉か痩せ型、猫背気味。

表紙が剥離し、のどに接着剤。花布の繊維がはみ出し、最終手段が粘着テープ。大雑把で不精。目次から付録まで使い込んでいる。根は繊細。頑固で一途。

しばらくこの席で、持ち主が戻るのを待ってみよう。
多分、私と気が合うはずだ。