雨の信号

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真っ暗な寝室へ入ると、私は正面の窓まで向かい、遮光カーテンを引いた。
外は雨だ。地面や屋根材を打つとたとたという強かな音が、一度カーテンに吸収され柔らかく弱ってから部屋へと染みてくる。私はベッドに寝転がると、その音を聴きながら、閉めきったカーテンのひだを数えた。そうして九つ目を数えたとき、降る雨音に、なにかが混じっていることに気がついた。
――無線の音?
声のようなノイズのようなそれは、かすかだけれど、アマチュア無線の通信音に似ていた。
以前テレビで見た人は、遠くにいる知らない誰かの発する電波をキャッチして、二言三言やりとりをしていた記憶がある。
ここにはアンテナすらないのに。不思議に思いながらカーテンを引き開けると、雨のもやを纏うように、暗い空に月が浮かんでいた。
私は全開にしたカーテンの真ん中に立って、月へ向けて手を振ってみた。
雨音はまた少しノイズして、私の側を、応えるように跳ねた。
その他
公開:19/05/06 00:22

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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