あなたに包まれて

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「ごめん。遅れた」
「遅いよっ…て、お兄ちゃん」
「何?」
「背、縮んだ?」

私は兄の頭が自分のお腹あたりにあることに気づいた。

「店に向かいながら話すよ」

ちっちゃい兄は語り始めた。

「餃子が好きなんだ」
「知ってる」
「愛してる。一緒になりたい。だからいつも行く店のお義父さんに頼んだんだ」
「店主ね」
「『餃子の皮で包んで幸せにしてください』って」
「そしたら?」
「涙ぐんで中華包丁を振り下ろしたよ。それで俺、半分になっちゃって」
「ははは」

目的のお店に着くとカウンターに座り、焼き餃子を注文した。

「半身は具材と一緒にミキサーにかけられて皮に包まれたんだ」
「念願叶ったね」

『はい。焼き餃子!』

私は届いた焼き餃子をたれにつけて口に運んだ。

その様子を兄は無言で凝視している。どうやら感想を聞きたいらしい。

知ったこっちゃない。

私は真実を皮に包んで飲み込んだ。
その他
公開:19/05/05 22:37
更新:19/05/08 11:15
スクー 真実はいつもB級グルメ

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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