宮本武蔵 異聞

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遂に宮本武蔵がこの地を訪れた。
俺は自他共に認める若手の天才剣士として、この地を去る前に彼奴に決闘を挑むことにした。
俺には二天一流を凌駕する奥の手があるのだ。

国境の山道で待つ事、数刻。
道の向こうから、武蔵と思しき男がゆっくりと歩いて来た。
「其方は武蔵殿と御見受けする」
「如何にも、拙者新免武蔵と申す」
しめたとばかりに、腰の大小をすらりと抜き去り「いざ尋常に勝負」と声を上げて切り掛かった。
ガッキ!
流石は音に聞こえた剣豪、俺の抜刀を事もなげに受けた。
だが、ここからが勝負だ。
俺は腹の中から三本目の奥の手を生やし、猛然と切り掛かった。
「武蔵、破れたりッ!」

ガッキ!
信じられぬ光景が目の前にあった。
武蔵は俺の三本目の刀をみごと受け止め、背中からさらに三本の腕を生やしていた。
「受けよ、六刺しの剣をッ!」
俺は六本腕となった阿修羅のような武蔵に、膾のように切り刻まれた──。
SF
公開:19/05/02 22:17
更新:19/05/03 18:02
ショートショートカレンダー 4月13日「決闘の日」

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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