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電話が鳴っている。
それは数限りなく聞いた懐かしい携帯電話の音だ。
僕が初めて持ったガラケーの、単純な音色のメール着信の音だった。
その音は、学生時代によく使っていた机の引き出しの中から聞こえているのだ。
ごちゃごちゃとガラクタの入った奥の方でそれは声を上げていた。
そしてすっかり埃にまみれていた。
もうあれから何台も買い換えて、今は最新式のスマホを持っている。
それと比べると、傷だらけで埃だらけで、なんてみじめなんだろうか。
画面を開くと薄暗い光に、懐かしい名前が浮かび上がった。
あの日、君に送ったメールの返事だった。

君が車に撥ねられて道路に横たわっていた丁度その時間に、何も知らずに送ったメール。
「今から遊びに行ってもいい?」
決して返事の来るはずのなかったメールだ。
今頃なのかい?
携帯はとっくに電池が切れているはずなのに、今頃返事をくれたの?

「わたしの方からそっちへ行くよ」
ホラー
公開:19/05/02 14:49

家韮真実(いえにら・まみ)( 兵庫県 )

もともとは漫画を描いていました。
漫画のアイデアを文字で書いているうちにショートショートも書くようになったんですよね。
名前はもちろんペンネーム。
実際にはない名字を考えました。
読みは、男の子気分の時は『いえにら・まさみ』
女の子気分の時は『いえにら・まみ』に変わります(笑)

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