ハイドランド・シーク⑦
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他人の秘密を勝手に暴く。
自分がされて許せない事を、私は今から人にする。
父の遺品は概ね仕訳け済みで、美咲君の布団と荷物が、机周りに固めてあった。一番上の引き出しは鍵が掛かるから、貴重品や、見られたくない物はここにあるはず。合鍵は私が持ってる事、彼はまだ知らない。
明言しなかったけれど、美咲君がこの部屋の住人になるのを、父は望んでいた。元々そのつもりで雇った人。遺して逝かなければならない、店と娘の面倒を、生涯引き受けてくれる人。
忙しい中でも、精一杯大切に育ててくれた。
でも、私の気持ちを全部解ってくれたわけじゃない。
――カチリ。鍵が開く。
緊張のせいかお腹が痛い。薔薇みたいだねと、気が強いと言われる私。実際は逆だ。気まぐれで、臆病で、意地っ張り。土の成分で色が変わり、水が切れると途端に弱る、紫陽花みたいな女。
引き出しを開く。
中に、美咲君名義の通帳と印鑑、折り畳んだ紙が一枚あった。
自分がされて許せない事を、私は今から人にする。
父の遺品は概ね仕訳け済みで、美咲君の布団と荷物が、机周りに固めてあった。一番上の引き出しは鍵が掛かるから、貴重品や、見られたくない物はここにあるはず。合鍵は私が持ってる事、彼はまだ知らない。
明言しなかったけれど、美咲君がこの部屋の住人になるのを、父は望んでいた。元々そのつもりで雇った人。遺して逝かなければならない、店と娘の面倒を、生涯引き受けてくれる人。
忙しい中でも、精一杯大切に育ててくれた。
でも、私の気持ちを全部解ってくれたわけじゃない。
――カチリ。鍵が開く。
緊張のせいかお腹が痛い。薔薇みたいだねと、気が強いと言われる私。実際は逆だ。気まぐれで、臆病で、意地っ張り。土の成分で色が変わり、水が切れると途端に弱る、紫陽花みたいな女。
引き出しを開く。
中に、美咲君名義の通帳と印鑑、折り畳んだ紙が一枚あった。
青春
公開:19/05/02 14:23
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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