劣等の元

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目は口ほどに物を言う。

死骸から目を抜き取った。
神経が切れ、手中に一対の目が収まった。
足元には目を空にした彼女が転がっていたが、もはや用済みと言えた。
粘液に守られた二つの眼球が、私を苛立たせるすべてだった。

ーーこの目なのだ。この目が、私を苦しませた。
言葉はなくとも馬鹿にし、罵倒し、視線だけで下等と罵った。
蔑みを光線として遠慮もなく放ち、私に劣等感を植えつけた。
この目が私の苦痛のすべてであり、人生を汚したすべてだった。
虹彩の美しいこの眼球が、私を怯えさせたすべてだった。

一対の眼球を床に落とし、私は思い切り踏みにじった。
足裏に固まった水分の弾ける様が伝わり、物理的に彼女の目が破壊されたのを感じた。

だが、劣等感が去ることはなく、心には粘り気のある澱が残り続けていた。
突然に生じた寒気に、私は身を震わせる他なかった。
ホラー
公開:19/04/30 17:12
劣等感

徳田マスミ

ショートショートを好むのです。
コメディからブラックまで、色んな話を書きたいと思います。

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