サルビア・ガーデン
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「ファーストキス、誰だった?」
ビアガーデンの隅、表情が隠れる絶妙な光量に到達して、馬鹿が訊いた。
「サルビア」
暗がりに埋もれた赤をくすぐって、アタシは白状した。
「嘘。俺じゃないの?」
予想外に悔しそうで、つい言い添えた。
「セカンドは、」
「これで何回?」
「アンタは?」
『忘れた』
同じ台詞で笑う。舌の甘さは前より薄かった。
お互い歳食ったなと思った。
「そろそろ戻ろ」
「なぁ。……もっかい、駄目?」
馬鹿が馬鹿言った。冗談の顔した真顔だった。
「10年遅い」
「おとといの間違いだろ」
「アンタは10年でしょ」
手を掴んで、今なら同じに見える、明るさの違う銀を並べた。
お披露目兼ねてなかったら、同窓会なんて出ずに済んだのに。
「サルビアの蜜、毒あるんだよ。吸い過ぎたらお腹壊すから」
ドレスを翻して走った。
また追って来ない馬鹿もアタシも、どうせ戻って、別の顔と口直しするだろう。
ビアガーデンの隅、表情が隠れる絶妙な光量に到達して、馬鹿が訊いた。
「サルビア」
暗がりに埋もれた赤をくすぐって、アタシは白状した。
「嘘。俺じゃないの?」
予想外に悔しそうで、つい言い添えた。
「セカンドは、」
「これで何回?」
「アンタは?」
『忘れた』
同じ台詞で笑う。舌の甘さは前より薄かった。
お互い歳食ったなと思った。
「そろそろ戻ろ」
「なぁ。……もっかい、駄目?」
馬鹿が馬鹿言った。冗談の顔した真顔だった。
「10年遅い」
「おとといの間違いだろ」
「アンタは10年でしょ」
手を掴んで、今なら同じに見える、明るさの違う銀を並べた。
お披露目兼ねてなかったら、同窓会なんて出ずに済んだのに。
「サルビアの蜜、毒あるんだよ。吸い過ぎたらお腹壊すから」
ドレスを翻して走った。
また追って来ない馬鹿もアタシも、どうせ戻って、別の顔と口直しするだろう。
青春
公開:19/04/30 02:47
サルビアの花言葉:家族愛・貞節
・燃える思い(赤)
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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