サルビア・ガーデン

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「ファーストキス、誰だった?」
ビアガーデンの隅、表情が隠れる絶妙な光量に到達して、馬鹿が訊いた。
「サルビア」
暗がりに埋もれた赤をくすぐって、アタシは白状した。
「嘘。俺じゃないの?」
予想外に悔しそうで、つい言い添えた。
「セカンドは、」

「これで何回?」
「アンタは?」
『忘れた』
同じ台詞で笑う。舌の甘さは前より薄かった。
お互い歳食ったなと思った。

「そろそろ戻ろ」
「なぁ。……もっかい、駄目?」
馬鹿が馬鹿言った。冗談の顔した真顔だった。
「10年遅い」
「おとといの間違いだろ」
「アンタは10年でしょ」
手を掴んで、今なら同じに見える、明るさの違う銀を並べた。
お披露目兼ねてなかったら、同窓会なんて出ずに済んだのに。
「サルビアの蜜、毒あるんだよ。吸い過ぎたらお腹壊すから」
ドレスを翻して走った。
また追って来ない馬鹿もアタシも、どうせ戻って、別の顔と口直しするだろう。
青春
公開:19/04/30 02:47
サルビアの花言葉:家族愛・貞節 ・燃える思い(赤)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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