ハイドランド・シーク①
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寝坊した朝、私服で店に出ると、お客さんがいた。
休業のはずなのに。慌ててカウンターへ駆け込む。
「いらっしゃいませ」
鉢に屈めた背中が振り向き、会釈した。
「今日からお世話になる、美咲です」
見慣れたエプロン。片手にジョウロ。新しいバイトさんが来るんだった。忘れていたのが気まずい。
「店長の娘の、うららです」
出し掛けた手を途中で引いた。店の手伝いはもちろん、お母さんが死んでから、家事も私の仕事。ジョウロを持つ手と比べ、こっそりスカートの端で拭った。
多分1つ2つ年上。女子にしては背が高めで、Tシャツとジーンズが似合う。
「あの、美咲ちゃん。水やりは表面だけじゃ駄目よ」
難癖を付けた理由は、自分でも判らない。
「重さも見てますよ」
紫陽花の鉢を持ち上げ、長めの前髪の奥、ビー玉みたいな茶色い眼が笑った。
「あとね。せめて美咲『君』になりませんか、うららちゃん?」
正直、第一印象は最悪だった。
休業のはずなのに。慌ててカウンターへ駆け込む。
「いらっしゃいませ」
鉢に屈めた背中が振り向き、会釈した。
「今日からお世話になる、美咲です」
見慣れたエプロン。片手にジョウロ。新しいバイトさんが来るんだった。忘れていたのが気まずい。
「店長の娘の、うららです」
出し掛けた手を途中で引いた。店の手伝いはもちろん、お母さんが死んでから、家事も私の仕事。ジョウロを持つ手と比べ、こっそりスカートの端で拭った。
多分1つ2つ年上。女子にしては背が高めで、Tシャツとジーンズが似合う。
「あの、美咲ちゃん。水やりは表面だけじゃ駄目よ」
難癖を付けた理由は、自分でも判らない。
「重さも見てますよ」
紫陽花の鉢を持ち上げ、長めの前髪の奥、ビー玉みたいな茶色い眼が笑った。
「あとね。せめて美咲『君』になりませんか、うららちゃん?」
正直、第一印象は最悪だった。
青春
公開:19/05/01 23:13
フラワーネットワーク
エピソード1
~美咲もみじと白銀うらら
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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