生活保護と働けるヒト

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まだ若い俺がリストラの対象になるとは思わなかった。収入の断たれた俺はアパートの賃貸を払い続けるより一度実家へ帰るべきだろうと考えた。
「駄目だ」
電話で親父は即答した。五年前、親父は店を営んでいる最中に突然倒れた。懸命のリハビリでなんとかお袋の手を借りながら暮らしているが、とても仕事を続けていられなくなった。
「おまえは働けるヒトだろ」
「何か問題があるのか?」
「万が一、おまえが帰ってきたら生活保護が打ち切られるんだ」
その現実を知り唖然とする。続いて、電話を替わったお袋が情け容赦ない声を響かせた。
「ま、帰られたらの話だけど。二度と帰ろうなんて思わないで頂戴」
たまには帰ってこいと何度も言っていた両親が、こんなことがあるものか。俺は信じられず故郷への切符を手に列車に乗り込んだ。しかし、生活保護は鉄壁だった。駅を下りれば巨大な城壁が、そして、無数の騎馬隊、鉄砲隊が声を上げて攻めてきた。
SF
公開:19/04/30 23:08
更新:19/04/30 23:21

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
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