帰り道の忘れ物

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「すみません。ここはどこですか?」
「ここかい?ここは忘れん坊さ」
「忘れん坊?」
「ああ、忘れん坊岬。岬に忘れたいものを置いてくるとその記憶が綺麗さっぱりなくなる不思議な場所さ。その様子じゃあんた、よっぽどのものを岬に置いてきたらしいな」
「あの、それって取り戻すこと出来ますか?」
「そりゃ岬に取りに行けば記憶は戻るよ。でもやめときな。岬は忘れたい辛い記憶ばかりだ。あんたもここに来たとき凄く辛そうだった」
「そうだったんですか…」
「ああ、数分前のあんたから手紙を預かっている。これを読めば、どうすればいいか分かるらしい」
「…これは僕の字だ。確かに僕は辛い何かをここに置いてくる決意をしたんですね。ありがとうございます。忘れものは忘れん坊に置いて、今から新しい人生を送ります」
私は帰る男の背を見送った。

「あの…ここはどこですか?」
次に訪れたのは先程の男と一緒に岬にやってきた女だった。
公開:19/04/28 19:07

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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