その電子が触れたい

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初めは天使かと思った。頭の上に光の輪っか。静電気を帯びた金色に光る翼。白い髪に黄色い瞳。仄かに輝く体は、少し宙に浮いている。彼女は透明な笑顔を湛え、こちらを見ていた。
「電子人だ」
教授が教えてくれた。
「意志を持つ静電子で出来ている。普段は周囲に散ってしまって形をがない。これは非常に珍しい状態だよ」
絶縁体の壁の中で、彼女は精密なホログラムのように同じポーズを続けている。静電子を帯びれば帯びるほど、彼女の美しさに磨きがかかった。
「触れたらいけない。触れたら電子が散って逃げ出してしまう」
構うものか。柔らかそうに輝く彼女の手を取った。
ばちん、と体に青い電子が走った。意識を失った私を起こしてくれたのは教授だった。
「なんてことをしてくれた」
教授は怒っていた。私は弁明しようとしたが痺れて体が動かない。いや、体が勝手に動く。
『やっと器を手に入れた』
私の声が聞こえた。そして私は、消えた。
その他
公開:19/04/28 15:54
更新:19/04/28 22:21
undoodnu祭り その電脳がハックしたい

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

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