その蛍光をリークしたい

噂によると、この辺りらしい。
世界中に溢れていた、色のついた光を閉じ込めた泉。
それらが閉じ込められて以来、世界は白と黒だけで構成されてきた。白い雲。黒い夕焼け。灰色の街並み。けれどそれも、今日で終わる。
周囲を見回すと、それはあった。
いくつのもごつごつした岩で囲まれた泉の中心。そこには様々な色の光が、揺れながら混ざりあっていた。

よし、やろう。
足元の重量感のある石を投げ入れる。

ごぶり。 と、ぷん。
音が大きく鳴る。

刹那。
泉から蛍光色の光が伸びる。何本も枝分かれして、次々溢れる。

漏れだした光は、世界中のそこここに広がって少しずつ色が滲む。けれど。

泉が落ち着いても、未だ世界はモノクロのまま。
ただひとつ、今までと違うのは、ほんの少しだけ世界の温度が上がったように感じること。
この温度がきっと、僕らがこれから目指していくべき、作るべき温度なのだろうと思った。