215. その脳が新出したい

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 わたしが貝塚の掃除をしていて、うっかり落ちてしまい命を失ってから幾年月──。
 西暦1800年代に研究者によって見つけられ、また別の研究者によってDNAを採取され1900年代に復活を遂げた訳だが、当初の生活の様子を一冊の本に纏めてみませんかと出版社の方に提案されたのは、私がこの世にはじめて誕生してからちょうど16050年目。
 さてどのように書いたらいいものかと当時の居住地であった千葉県まで来てみたが、雨がぽつりぽつりと降りだした2019年の4月末は思ったよりも寒い一日の始まりであった。
 母君にただあひたくて貝塚や
という無季の句を詠んだ後、書き出しの一文をどうすべきか頭を捻る。
 それと同時に、令和最初に受けるインタビューで聞かれるであろう、時間はどうすれば止められるかというものの答えも同時に思案する。
 答えは簡単だ。書物の中に閉じ込めればいい。わたしの脳も書物となるのだから──。
その他
公開:19/04/29 21:00
更新:20/08/14 01:29
undoodnu祭り その電脳がハックしたい 新出既出さんへ

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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