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ギギギギギ、ギギギ、
「また人面蟹か」
鳴き声の方を見ると、甲羅が人間の顔にそっくりの蟹が塵を漁っていた。
俺の住む島に「K島癌研究所」という施設ができ、どうもそれ以来この人面蟹が現れたようだ。
今夜は嵐だ。
ゴウゴウという唸りの中に、ギギギギギという鳴き声が交じった。俺は布団を頭から被って耳を塞いだが、声はどんどん酷くなった。
ふと、気配を感じて頭を上げると、天井からぼとりと何かが落ちた。それは闇の中でギギギと鳴いた。
「うわぁあッ!?」
部屋には無数の人面蟹がざわざわと蠢いていた。
俺は慌てて外に出たが、道路にも夥しい数の人面蟹がギギギという鳴き声を上げ、こちらを見つめた。
研究所は真っ赤な炎に包まれていた。
舟着場に駆けていくと、女がひとり舟を漕ぎ始めていた。
その顔は蟹にそっくりだった。
女は俺の顔を見ると、
「近づくな、この化物!」
と叫び、舟を岸から遠ざけていった──。
「また人面蟹か」
鳴き声の方を見ると、甲羅が人間の顔にそっくりの蟹が塵を漁っていた。
俺の住む島に「K島癌研究所」という施設ができ、どうもそれ以来この人面蟹が現れたようだ。
今夜は嵐だ。
ゴウゴウという唸りの中に、ギギギギギという鳴き声が交じった。俺は布団を頭から被って耳を塞いだが、声はどんどん酷くなった。
ふと、気配を感じて頭を上げると、天井からぼとりと何かが落ちた。それは闇の中でギギギと鳴いた。
「うわぁあッ!?」
部屋には無数の人面蟹がざわざわと蠢いていた。
俺は慌てて外に出たが、道路にも夥しい数の人面蟹がギギギという鳴き声を上げ、こちらを見つめた。
研究所は真っ赤な炎に包まれていた。
舟着場に駆けていくと、女がひとり舟を漕ぎ始めていた。
その顔は蟹にそっくりだった。
女は俺の顔を見ると、
「近づくな、この化物!」
と叫び、舟を岸から遠ざけていった──。
SF
公開:19/04/29 13:42
更新:19/05/06 13:34
更新:19/05/06 13:34
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2月4日「世界対がんデー」
用です。すみません
(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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