風来山人ふたたび

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「土用の丑の日は、わしの著作物じゃ!」
と、源内先生は法廷で怒鳴った。

この先生、獄中にいた所を救い出して30世紀に連れてきたのだが、
「うなぎを夏に食すのを考案したのはわしじゃ!」
と言いだし、土用の丑の日のキャッチコピーの著作権を主張し始めたのだから堪らない。
「通常、著作者が亡くなって70年経てば、著作権は無くなるワケですが、本人がまだ生きて現代にいる場合は⋯⋯うーん」
裁判官も前例のない事態に、どう判決を下してよいか考えあぐねたが、結局、源内先生の権利を認めるという判決を下した。
「ワッハッハッ、正義は勝つ!」
源内先生は「土用の丑の日」の著作権を勝ち取り、大金持ちとなった。

それを見ていた出版社、この手があったかと、死ぬ直前の大昔の文豪たちを次々と30世紀に連れてきたのだから堪らない。
著作権は無制限に延び始め、パブリックドメインの斜線が取れて世界は©️で溢れかえった──。
SF
公開:19/04/27 12:32
更新:19/04/27 12:33
ショートショートカレンダー 1月28日コピーライターの日 用です。すみません。

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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