その電子レンジがカップ酒ティンしたい

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私がこの家の冷蔵庫になって久しいが、ついに具合が悪くなり作動音が煩くなった。音を抑えようと力むほど音は増し、かといって力を抜けばだだ漏れだった。いっそ捨てられたほうが楽なのに、私の中に焦燥と不安と恐怖なんかをごった煮したような罪悪感が膨らんだ。

主人が私の冷やしていたカップ酒を電子レンジに入れる。こいつも私と同じAI家電だ。新参のくせに仕事中は私より大きな音を平然と出す。音よ静まれと主人に媚びて、罪悪感を募らせる不良品の私をこいつはどう思うか。

私の音が、こいつの音に紛れる。私の自責の念に切れ間が生まれそうになる。私は何を償ったわけでもないのに、何かを許されたような、私の中のごった煮を何者かが汚く食い散らかすような、不安に襲われる。

悪いのは私だ。家族を嫌ってはいけない。

「ティン」

熱くなったカップ酒を持った主人が私に近づいて、私をどんと蹴った。私の中でなにかが倒れる音がした。
SF
公開:19/04/27 12:26
undoodnu祭り その電脳がハックしたい undoodnu文学

10101298

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