ちょっとの距離

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「またイチゼロタクシーをご利用ください」
 お客様を降ろしてナビを見る。この辺わかんないんだよな……。回送で戻ることにした。
 途中でおばあちゃんが手を挙げた。ごめんなさぁいと走り去り、しばらく走って赤信号で止まった。するとさっきのおばあちゃんが追いかけてくる。あぁ、悪いことしたな……。信号が青になってまた走り去った。
 しばらく走ってまた赤信号で止まる。バックミラーを覗く。さすがにもう見えない。ふぅ、やっぱり乗せてあげれば──コンコン。
「え!」
 さっきのおばあちゃんがドアをノックした。
「あぁよかった! 追いついたわ!」
「ありがとうございます……」
「ごめんねぇ近くて申し訳ないんだけど。年取っちゃうとね、ちょっとの距離でもしんどくって。はぁ疲れた」
「この辺詳しくないんですけど……」
「あぁ大丈夫よ一本道だから。えぇっとね、いっこ前の信号のとこ」
「え?」
「いっこ前の信号のとこ」
ミステリー・推理
公開:19/04/27 10:45
地べたの雲

10101298

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