哀愁の写真家

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パシャッ!
あー…。一眼レフに写る車道を、俺は歯痒い思いで見つめた。
哀愁の写真家。それが俺の生業だ。ただの写真家じゃない。感傷的で、観る人の心を動かすような写真を撮っている。最近、車道で風に吹かれて舞っているレジ袋の写真を撮りたいと思っているのだが、その場面に遭遇することは稀である。しかも、あっ!と思ってシャッターを切っても時既に遅し、レジ袋は突風で舞い上がって写るのは車道だけ、目を上げて探してももうどこにもないということが続いている。
あれ?…おっ!今見失ったと思ったレジ袋があそこに!俺は突かれるように駆け出して車道に飛び出した。と思ったら、
「ドスッ!」
…俺はアスファルトに倒れこんでいた。歩道の端の段差に足を引っかけて転んでしまったらしい。拍子に手の中から飛び出したカメラが逆さまに着地して
「カチッ…パシャ」
レジ袋のようにヨレたシャツの俺は、きっとカメラの中で哀愁の写真家だ…。
その他
公開:19/04/26 19:09
更新:19/08/13 17:01

北瓜 彪

ショートショート講座(2019年7〜9月期)にも参加
しました。
皆様宜しくお願いしますm(_ _)m

※アルファポリス
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/664452356
でも活動しています。SS講座で提出した作品「ファンフラワーに関する見聞」「大自然」もそちらで公開しております。
 

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