214. その瞬間がパックしたい

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日差しが強くなってきた5月のある日、5時間目の体育の授業でのこと。
男女共に準備運動を終え、女子がまずハードルを跳んだ。
島田さんの髪にいつもユルくくっついているクマは今はいない。きっと更衣室に置いてるんだろう。
そうぼんやり考えながら靴紐を直していると、「…くん、安藤くん」僕を呼んでいる声がした。
「…ぁあ、島田さん?なに?」
突然のことに赤面する暇もなくただ、声が上ずる。
「靴の紐、蝶々結びが縦になってるよ」
「い、いつも僕は上手く結べないんだ…」
「もー不器用なんだから!見てて、こうやるの」
ぷくっと頬を膨らませた彼女は次の瞬間、僕の前に屈んで、僕の右足の靴紐を丁寧に綺麗な蝶々の形に結んでくれた。
「左足は自分で出来る?」
「いや、出来ないよ」
僕は高鳴る心臓の音を悟られないように、出来るだけつっけんどんにそう答えると、もう片方の紐を結んでくれる彼女のうなじをただジッと見つめた──。
青春
公開:19/04/27 21:13
更新:19/04/29 23:56
undoodnu祭り その電脳がハックしたい

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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