その弁当がラップしたい

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昼休み。僕は職場の休憩室で弁当箱を開いた。中身は通勤電車に揺られて潰れていた。
「それ、自分で作ってるの?」
同期の春崎だった。母だと伝えると「そっか」と呟き、小さな弁当箱の蓋を開けた。
「凄いな」
「手抜き弁当だよ」
「いや、中身じゃなくて。なんで弁当が潰れてないんだ?」
「そこ?ラップで上から蓋をするように少し押さえるとズレなくなるのよ」
すぐに母に教えなければ。チラリと覗くと春崎の弁当は彩り豊かで食欲をそそられた。
「自分で作るの?」
「うん」
その時僕は本当に何気なく、どこかで聞いた台詞を生まれて初めて口にしていた。
「いいお嫁さんになるよ」

数年後、春崎が作る弁当にはラップの蓋がかかってる。それだけじゃなく、弁当箱の底にもラップが敷いてある。こうすると手軽に洗えるらしい。
「また弁当箱戻してないでしょ。すぐ台所に持ってきてよね」
僕は平謝りして、カバンから愛妻弁当を取り出した。
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公開:19/04/27 19:00
更新:19/05/06 06:38
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のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ショートショートって難しい。
最初の頃は400字は短すぎるなんて思ってましたが、色々書くうちに400字に無限の可能性を感じるようになりました。

読んだ人の心が少しでも動いたらいいな。何かを感じてくれたらいいなと思って書いてます。

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