玄関と愛猫

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小3の頃、飼っていた猫が亡くなった。15年もいた猫だったから、みんな悲しんでた。おじいちゃんなんて、普段あまり表情が変わらない人なのに誰よりも泣いてた。
でも私は全然悲しくなかった。何故って、亡くなったはずの猫がいつも玄関で丸まってるのが見えてたから。
何故か私にしか見えなかった。一番付き合い短いのに。赤ちゃんの頃は耳やしっぽを引っ張ったりしてしまったらしいのに。
触ろうとしてもすり抜けてしまうから撫でられなかったけど、こっそり話しかけてはいた。猫は顔を上げて興味深そうに聞いてくれることもあれば、我関せずといったようにあらぬ方向を見ていたり、眠っていたりした。そういう態度は、生前と変わらなかった。
私が大人になったある日、猫は急に姿を消した。あるいは、急に私に見えなくなった。
そうして、二度と現れることは、あるいは、再び私に見えるようになることは、なかった。
初めて、心から悲しいと思った。
ホラー
公開:19/04/25 00:02

PURIN

超ド級の素人です。他サイト様でも書かせていただいています。
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