深眠魚

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深くふかく、沈んでいった。ここは眠りの海。さざなみの揺らぎは消え、もうわずかな光すら届かない。だから突然の声に、私は最期の夢でも見てるのかと思ったんだ。

「馬鹿だね、夢はお前さん自身だよ」
「あ、あんたは?」
「深眠魚ってやつさ。破れちまった夢が大好物でね、落ちてくるのをじっと待ってんのよ」
「夢…」

ステージの照明が熱い。ほとばしる汗に情熱が弾ける。聴衆がうねり、興奮は激しく脈打つ。有頂天は更なる高みを仰ぎ、仲間がばらばらと転げ落ちる。恋人の涙。年老いた母親は力なく笑い、目の前の大ジョッキがテーブルから落ちて、それから…。

「ちょっ、待て!何だ、この甘ったるいコーティングは!」

魚の口から、私は勢いよく吐き出された。と同時に、ボロリと何かが剥がれ落ち、再び浮かび上がった。海面近くで、夢はあの日よりも輝きを増し…。


『いつまで寝てんだい、ロックスター!まったく、食えない男だよ』
ファンタジー
公開:19/04/24 23:30

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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