お疲れさん　ご苦労さん　ありがとさん

「ただいま」
「お帰りなさいあなた。って、また増えてる」
『今日からお世話になります！僕ら、お疲れさんとご苦労さんです』
「またなの！またあなたったらこんなに疲れと苦労を拾ってきたの！？これで何回目！？」
「うるさいなぁ。勝手についてきたんだから仕方ないだろう。それより飯だ飯」
「ねえ、あなた。ありがとさんは？」
「知らない」
ダメだ。この人、ありがとさんがいなくなったことで私に感謝しなくなっている。
「私、ちょっとありがとさん探してくる」
私は駅のホームで泣いているありがとさんを見つけた。
『僕、もう必要ないのかな』
ありがとさんは気を落としていた。
「そんなことないよ。私はありがとさんがいない生活なんて考えられないもの」
私の励ましにありがとさんは笑ってくれた。
翌朝、夫は家を出る前に「いつもありがとう」と言ってくれた。
昨日のお疲れさんとご苦労さんがありがとさんに変わっていた。