帰り道の忘れ物

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今日も残業しようとする僕を先輩が飲みに誘ってくれた。
「たまには仕事を忘れてパーっと行こうぜ!」
先輩は僕を連れて帰り道にある居酒屋・忘れ物に入った。
「大将、生中二つ!」
先輩は店に入るなり早速注文する。備え付けのテレビでは始まったばかりの野球に皆が釘付けである。学生時代球児だった僕もついつい見入ってしまった。
「お前、野球好きなの?」
「はい」
「へぇ~、どこのファン?」
先輩と取り留めのない話をして時間を潰す。
「おっと、もうこんな時間か。大将、お勘定!」
「あっ、半分払います」
「ここは俺にカッコつけさせてくれ」
今日はいつも厳しい先輩の意外な一面を見た。
「いいか。お前もいつか後輩を持つ。その後輩が今にも死にそうな顔で残業を始めた時、お前がここに連れてきてやれ。ここで仕事という忘れ物をさせてやるんだ」
僕は気付かないうちに追い詰められていたようだ。
先輩、ありがとうございます。
公開:19/04/26 18:27

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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