中庭の猫

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私はときどき、JR線を西に一時間ほど揺られ帰省する。実家は田舎と呼ぶには中途半端な位置にあるので、西に用事があれば、ちょっと寄って行こうかなという気にもなる。

けれども人は、近くていつでも行けるからという理由でしばしば訪問を先延ばしにする。
通勤途上にあるのだからと毎日横目で追いやっていたあの静謐な美術館には、とうとう寄らずじまいだ。

実家へ帰ってみると、猫の額ほどしかない家の中庭に、使われなくなったモノたちが雑然と置かれていた。
「汚い座布団だね」私が指差すと、父はこう答えた。
「猫が来るんだ」

猫はときどき、ガレージにも現れる。ガレージの屋根には登らず、屋根に守られた車のボンネットに座っているそうだ。父の愛車の上に堂々と鎮座しても、何も文句を言われない。

ある夜、私は中庭に面した障子をガラッと引いた。
座布団猫のキラリと光る眼が、私を射抜いた。
招かれざる猫は私のほうだった。
その他
公開:19/04/26 12:25

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