人面花(地)

0
7

二度目の相手は、息子の幼稚園の教諭だった。
男手一つにろくな面倒も見られず、預け放しでいるうち、息子から懐いた。自分の分身と思えない程、母親に生き写しの顔。彼女がキスした人面花の化身の様で、目を逸らしたい気もあった。
生まれ月にちなんで『もみじ』と名付けた息子が、父親への反発と母親への思慕半分、青い恋をしているのも承知だった。性格と好みは自分譲り。ますます嫌だと思った。向こうは憎悪の域だったろう。再婚以降、徹底的に避け、高校卒業の日に家を出ると、以降の生活を一切頼らなかった。十年間ほぼ寄り付きもせず、消息を交わす事すら拒んだ。

久し振りに息子の声を聞いたのは、結婚の報告だった。
予想よりやや高く、肩肘張りながらも、いっぱしの男の声だった。ドア越しに『おめでとう』を返した声は、情けないくらい掠れた。

現在、息子は三人娘の父になった。誕生日には二人で、故郷の墓へ葬った、亡き妻に会いに行く。
その他
公開:19/04/25 16:03
更新:19/05/03 18:25
フラワーネットワーク エピソード0-② 美咲創樹と美咲もみじの話

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容