帰り道の忘れもの

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パトロールの帰り道、夜道を自転車で走っていると電灯の下にランドセルが見えた。女の子がうずくまって泣いている。
「どうしたの?」
「忘れちゃったの」
泣きじゃくりながら女の子が言う。
「忘れ物かな?うちへの帰り道を忘れちゃったのかな?」
「どっちも」
道端に自転車を停めて女の子と目線を合わせた。
「忘れ物は何かな?」
女の子は私をまっすぐに見て言った。
「ひかりを忘れちゃったの」
なんのことだろう。だが私は「そっか。じゃあ探してみよう」と女の子の手を引いて歩き出した。
少し歩くと住宅街へ出た。家々の窓から光が差していた。女の子はある家の前で立ち止まった。
そして「おじさん、ありがとう」とその家から溢れる光の中に走り、消えていった。
私は自転車を取りに戻る途中、ふと思い出した。先月、あの場所で夜に交通事故があったこと。被害者の女の子はランドセルを背負っていた迷子の女の子だったことを。
ファンタジー
公開:19/04/22 22:20
月の文学館 帰り道の忘れ物

砂塵

読んでいただきありがとうございます。
話のおもしろさ云々はひとまず置いといて、とりあえず一本完結させることを重視して書いてます。
朗読ラジオ「月の音色リスナー」です(^o^)/
低浮上中なのでコメント返し遅れるかもですが必ずお返しします。

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