マルシー・ボクー

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あたしはキャッチコピーをメモに書き留めた。
しばらくすると、コピーの下にあたしの©表記が浮かんできた。今度はそれに合わせて、落書きのような絵を描いてみた。
するとまた、同じように©表記が浮かんできた。

「世の中、便利になったものねぇ」
同僚のM男がコーヒーを片手に近寄ってきた。
「著作権のかかるものには、自動的に自分の©が刻印される。現代ナノテクの勝利だネ」
M男はさらさらとペンを走らせ、キャッチコピーを10個書いた。そのうちの3つまでは©表記が浮かんできたが、あとの7つは何も浮かんでこなかった。
「アハハ、ありきたり過ぎて誰かのと被ってるのよ」
「それはそうと、君はいつまで働くんだい?」
M男は、あたしの大きなお腹を心配そうに見つめた。
「来月が予定日だから、そろそろ産休に入るわよ」

あたしの子どもは無事生まれた。
だがしばらくすると、我が子のお尻にあたしの©表記が浮かんできた──。
SF
公開:19/04/22 16:57
更新:19/04/23 11:20
ショートショートカレンダー 1月28日コピーライターの日 用です。すみません。

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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