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かつてこの屋上には街があった。
愛を伝え合う男女もいたし、組織というシステムに耐えきれず静かに泣いていた青年や、何も考えず、何も生み出さず、ただぼうっとしている女子もいた。

しかし時の経過と共に皆消えた。
ここへ通ずる階段は誰も上らなくなり、コンクリートの静けさだけが仕方なく残っている。これも時期に消えるだろう。

宇宙と同じ静けさだ。

皆感じなくなったのだ。「自分」という訳の分からない認識が破裂しないようにと防衛本能を働かせて、アンテナを壊し、身体を大きくそして頑丈にすることだけを目指した。
だからこの街へ行く理由も無くなった具合だ。ここへ来なくても幸せになれると錯覚している。

時々小鳥がここを訪ねる事がある。
その時、この街に染み付いたどろどろとした霊魂の汚れを眺めるとすぐに飛び立ってしまう。

これは宇宙には無い事である。
その他
公開:19/04/20 22:34
ショートショート 物語 屋上 学校 ポエム

呉二郎

毒にも薬にもならぬ詩、物語。


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