夜姫と朝彦

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夜国の姫が、朝国の王子と結婚する。皆が祝福したが、心配事がひとつだけ。
朝国のタイヨウの眩さだ。
自国の空には、月と星しかない。
タイヨウの明るさは、満月の比ではなく、遣いの者は、朝国内で瞼をひらけなかったという。
不安がる王と王妃に、夜姫は「朝彦がいるから」と微笑み、輿入れした。
案の定、夜姫は長いこと何も見えずに暮らしたが、不幸はなかった。王子がいつも傍らで手を引き、言葉で景色を伝えてくれたからだ。

ある朝、ついに日射しに目が痛まなくなった姫が「久しぶり」と笑いかけると、夫の顔は見る間に青ざめた。ごめん、と謝る声が震えている。
「百人の家臣も、大広間も大庭園もない。全部嘘だ」
確かに、そう聞いていた。反して、目にした新城は質素な木造二階建て。
俯く朝彦に、私ね、と夜姫は笑った。
「声が優しくて、掌が温かいから、貴方を愛して、ここにいるの」
鼻を鳴らす夜姫を、朝彦はきつく抱きしめた。
ファンタジー
公開:19/04/21 23:57
更新:19/07/11 03:36
結婚祭り すべりこめてませんが汗 おめでとうございますっ

rantan

読んでくださる方の心の隅に
すこしでも灯れたら幸せです。
よろしくお願いいたします(*´ー`*)

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