木を食べる人

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その人は森の中で、白樺をバリバリ食べていた。枝をバキ折り、むしゃむしゃ食べていた。唖然とする私に気づき、彼は枝を差し出した。
「食べる?」
恐る恐る手に取る。白い薄皮の内側に茶色い樹皮。その内側にクリーム色の年輪。思い切って、口に入れた。
「なんだ。これはお菓子だ」
チョコとクッキーが口当たりよく、ぽりぽりといくらでも行けた。
「これもいいよ」
差し出された松ぼっくりの焼き菓子を口に入れると、コーヒーの味がした。
彼は苔を千切り、丸めて口に運ぶ。石ころなんかもゴリゴリ齧り、花びらをちぎって口に含む。
「全部食べたりしないんだ。来年の春の分だからね」
そうして彼は背伸びして、猫背になって目を瞑る。
「ああ美味しかった。ご馳走さま」
春の木漏れ日を浴びて、彼はお地蔵さんになった。
来年の春には、この土地は更地になっている。私が土地を手放したから。
「ごめんよ」
森は、静かにさざめくだけだった。
ファンタジー
公開:19/04/21 23:52
更新:19/04/22 21:47
白樺が美味しそうに見える

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
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写真は全て自前でやっています(笑)

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