溶けない照明

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地球温暖化が進み、目に見えて海上から氷が減り始めた頃、「溶けない氷」が開発された。これは温度が0度から絶対に上がらない氷で、暑さに苦しんでいた人々は熱狂した。

天然のクーラーだ!

次々にこの氷を使った商品が作られ始めた。大人気商品は照明だ。「溶けない氷」で作った器の中に電球を入れると、まるで水中から水上の光を見上げたような揺らめく明るさが降り注いだ。人々はこれに夢中になって、こぞって「溶けない照明」を作り続けた。暑い夏の茹だるような道路にも、暖房のきいた冬の薪の弾ける暖炉の上にも、世界中のそこかしこに「溶けない照明」は置かれ、休むことなく地球を照らし続けた。

そして今。
太陽が地球にぶつかろうかという間際にも、一層光を反射させ、灯りを必要としなくなった地球さえも、人々が生きていた時と同じように、ゆらゆらと照らし続けている。
SF
公開:19/04/21 21:17

Somei_Yosino

ファンタジー小説を書くのが好きです。
よろしくお願いします。

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