器の底の本当の気持ち

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「富山ブラックです」
ラーメンを置いても彼は気づかない。そりゃそうか。3年前、私よりラーメンを選んだ男だもの。それが今や人気ラーメン店の主。人気の秘密は特製の器だ。器の底に彼の一言が書いてある。純一無難な彼の言葉は器毎に違うので、それを楽しみにしているお客が多い。ただし、器の温度が45℃を下回ると文字が消えてしまう。熱いうちに食べてほしいと願う彼の遊び心だ。美味しいわけじゃな、うまーっ!何これ、超美味い!B級グルメと馬鹿にしてごめん。醤油ダレを使った漆黒のスープがヤバい。私完敗。ラーメンに負けた女、決定。それでいい。気づけば号泣。スープはすっかり冷めてしまった。
もしかしたら器の底に彼の本当の言葉が隠れてるかもと期待したけど、もう消えてしまったわね。
スープを飲み干し、器の底を見て私は息を呑んだ。

待たせてごめん

顔を上げると、真剣な表情の彼が。
「俺の愛は冷めてないから。結婚しよう」
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公開:19/04/21 15:42
更新:19/04/21 23:11
結婚祭り 真実はいつもB級グルメ スクー

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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