戸籍の小人

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市役所で彼と一緒に婚姻届を提出した。
「おめでとうございます」
幸せすぎて溶けてしまいそうだった。
「見てて下さいね」
窓口の方にそう言われて婚姻届を見た。
「ほら、お二人の戸籍がやってきましたよ」
どこから降ってきたのか、二人の小人が婚姻届の上に舞い降りた。
「結婚するという事は、親の戸籍から抜けて、二人の新しい戸籍を作ることなんですよ」
その言葉にハッとした。
新しい戸籍が生まれて、新しい家族が生まれる。
その意味の重さがズシリと圧し掛かってきた。
よく見ると小人の背中には私と彼の名前が記されていた。小人が見つめ合って手を繋ぐと、私の苗字が彼と同じになった。そして小人は婚姻届の中に溶けるように消えていった。
彼が私の手を握った。
手から不安が伝わってきた。
そうだ。不安なのは私だけじゃない。
これからは二人で乗り越えていくんだ。

幸せになるからね。

私は婚姻届と二人の小人に誓った。
ファンタジー
公開:19/04/19 22:45
更新:19/04/19 23:04
結婚祭り

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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