ブーケ・トス

今日はＰ子の結婚式だ。
早い。
時の流れは早過ぎる。
とくに結婚願望もなく生きてきたけど、もうすぐ30の年も見えてきて、多少の焦りも出てきた。Ｐ子だけはまだ当分独身だと思ってたのに、いつの間にやら男をこしらえやがって。

｢ん？」
会場の女性たちがざわつき始めた。
あっ、Ｐ子出てきた。
｢綺麗だなぁ⋯⋯」
手には大きな花束を持っていた。
そうか、みんなブーケ・トスを勝ち取ろうと狙ってるのね！
ニヤニヤしながらＰ子は後ろを向いた。
そして渾身の背筋力をもって、一番うしろにいるあたし目がけてブーケを投げてくれたのだ。
ブーーーーーーーーン！
あと少しであたしの手に届くわ。
Ｐ子ありがとう！

だがしかし、突如ブーケから蝙蝠の羽が生え、バッサバッサと青空へ飛び去っていった⋯⋯。
Ｐ子は真っ赤な二本のツノを立て、歯を剥いて笑っていた。
｢ケケケ、ごめんね」
これだから悪魔の結婚式はイヤなのよ──。