ハーバリウム

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私は趣味でハーバリウムを作っている。瓶の中で美しく咲く花を見ていると心が安らぐ。
ウチは貧乏だから中に入れる花は野山で摘んできたものが多い。今日はキランソウでハーバリウムを作ってみた。青い花がとても涼しげだ。
「また下らんもん作りやがって!そんな金があるなら俺の酒を買ってこい!」
父は私の部屋に入るなり、いつものように暴力を振るう。
その拍子に作ったばかりのハーバリウムが倒れてしまった。瓶の中からゆっくりとオイルが流れ出る。
「きったねぇ!ちゃんと掃除しとけよ!」
父は部屋から出ていった。
やっぱりダメだ。いくらハーバリウムで心を癒そうもあの男がいる限り私は幸せになれない!
そんな時、ふとキランソウの別の呼び名を思い出した。
地獄の釜の蓋。
ああそうだ。あの男は地獄の釜の蓋を開けた。業火で焼かれるべきなんだ。
私は酒を飲んで眠っている父に先程のハーバリウムを垂らすと迷うことなく火を点けた。
公開:19/04/19 18:14

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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