ＭＭ婚

　「結婚しました」という葉書が届いた。新郎の方は知人だが、新婦の方は「ＭＭ」マークの覆面を被った人形で、名前は空欄だ。
「これ冗談かな」と妻に見せると、妻は「これＭＭ婚よ！」と、叫んだ。
「なんだそれ？」
「ミステリーマリッジよ！　相手が見つからない人が『シークレット』の相手と結婚するの。戸籍だって相手を空欄のまま作れるし、税制上の控除だってうけられるのよ。ま、国の少子化対策の一環ね」
「でも、相手が分からないんじゃ…」
「馬鹿ね。漠然と『結婚したい』っていうのじゃなくて、『この新婦を探す』っていう強い動機付けが生まれるの。期限内に辿り着けなければ罰則もあるし」
「国家的縁結び企画か…」
「この葉書は新婦に繋がる情報を持っているはず人に、所轄官庁から発送されるの。あなたは新郎への情報提供を法的に義務付けられたの」
　僕は頭を抱えた。
「知ってることはみんな話しなさい」
　と、妻が言った。