キャンバスの中の貴婦人

9
7

『いつ見ても美しい…』

窓の向こうを見ながら画家はキャンバスに色を重ねた。
今日も彼女はそこに立っていた。

彼女の美しさは人を虜にする。

その貴婦人を一目見ようと大勢の人が彼女の元に集まっていた。
私も初めて彼女に会った時その美しさに心を奪われたものだ。

今は足を悪くして会いに行けないが代わりに日々その姿を描いて心を慰めることにした。

幸い彼女には優秀な用心棒がいる。悪い虫はつかないだろう。
怪我したら困るからと身の回りの世話をする人間もいる。

彼女の身に災いが起きたのは働きづめの用心棒にわずかばかりの休暇が与えられた矢先だった。

何やら外が騒がしい。窓の向こうを見るとそこには泣いたり助けを呼ぶ人々と傷だらけでなんとか立っている彼女の姿があった。
『なんでこんなことに…』

私は変わり果てた彼女の姿に震えながらも必死に筆を走らせた。そして

グラリ…

彼女は崩れ落ちていった
ファンタジー
公開:19/04/18 00:57

つむぎ


​​​ショートショートはじめました

​​​

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容