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知らない相手と「おはよう」と「おやすみ」の挨拶を送り合う作業が、しんどくなっていた。
それは五年前、「俺が死んでからも、相手からスタンプがこなくなるまでは毎日、スタンプを送ってくれ」という父からの頼みだったが、現在、私の身体は病魔に蝕まれつつあった。
私は先方に電話をした。電話に出たのは若い女性だった。
「突然に申し訳ない。父の代理でラインをしていた広瀬というものです」
彼女が息を呑む気配を感じた。
「友坂です。私は祖母にいわれて、ずっと…」
あちらの御祖母様は三年前に亡くなっていた。
私は自分の状況を説明し、もうラインはやめにしましょう、と告げた。すると、友坂さんは言った。
「私は続けたいです。広瀬さんのスマホに。だから広瀬さんも」
私は涙がこみ上げてきた。
「ありがとう。ただ、他の人に託すのは止しましょう」
私は今日も、友坂さんに挨拶をするために、生き続けたいと思う。
それは五年前、「俺が死んでからも、相手からスタンプがこなくなるまでは毎日、スタンプを送ってくれ」という父からの頼みだったが、現在、私の身体は病魔に蝕まれつつあった。
私は先方に電話をした。電話に出たのは若い女性だった。
「突然に申し訳ない。父の代理でラインをしていた広瀬というものです」
彼女が息を呑む気配を感じた。
「友坂です。私は祖母にいわれて、ずっと…」
あちらの御祖母様は三年前に亡くなっていた。
私は自分の状況を説明し、もうラインはやめにしましょう、と告げた。すると、友坂さんは言った。
「私は続けたいです。広瀬さんのスマホに。だから広瀬さんも」
私は涙がこみ上げてきた。
「ありがとう。ただ、他の人に託すのは止しましょう」
私は今日も、友坂さんに挨拶をするために、生き続けたいと思う。
その他
公開:19/04/17 10:20
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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