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夕食のスープが薄味に感じられたので、食卓の「塩胡椒」に手を伸ばしたら、妻に手を抑えられて「それ、私専用だから」とラベルを見せられた。そこには妻の名前が印字されていた。
「専用って?」と尋ねると、妻は瓶を握りしめて話し始めた。
「お料理のレシピで『塩胡椒少々』っていうでしょ。あれがずっと分からなかったの。なんできちんと分量を教えてくれないのかなって。それで、塩胡椒少々教室に通ってたんだ」
「そ、そんな教室が…」
「これはね、無数の塩と胡椒から厳選した私専用の塩胡椒少々を、一振りでふりかけられるんだ。本当に、塩胡椒少々って奥深いものなの。私は三年で出会えたけど、七年以上通ってる人もいるわ」
「ち、ちょっと、かけてみてもいい?」
私がそう言うと、妻は顔を強張らせた。
「この塩胡椒少々は私自身なの。それを理解した上で、どうしてもっていうのなら、どうぞ」
もちろん、私にはそんな度胸はなかった。
「専用って?」と尋ねると、妻は瓶を握りしめて話し始めた。
「お料理のレシピで『塩胡椒少々』っていうでしょ。あれがずっと分からなかったの。なんできちんと分量を教えてくれないのかなって。それで、塩胡椒少々教室に通ってたんだ」
「そ、そんな教室が…」
「これはね、無数の塩と胡椒から厳選した私専用の塩胡椒少々を、一振りでふりかけられるんだ。本当に、塩胡椒少々って奥深いものなの。私は三年で出会えたけど、七年以上通ってる人もいるわ」
「ち、ちょっと、かけてみてもいい?」
私がそう言うと、妻は顔を強張らせた。
「この塩胡椒少々は私自身なの。それを理解した上で、どうしてもっていうのなら、どうぞ」
もちろん、私にはそんな度胸はなかった。
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公開:19/04/18 14:25
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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