タロとジロ

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「あの極寒の惑星でよく5年も生き延びたものです」
わたしはビューワーの前の提督に告げた。

「我々が船から降りると、タロとジロは以前と変わらぬ姿で走り寄って来ました。ただ、ちょっと大きさがね⋯⋯」
私が言いにくそうにしていると、提督は先を続けろと促した。
「まずですね、二頭とも体長30メートルを越えてました」
提督は飲みかけのコーヒーを吹き出した。
「それだけなら収容可能なんですが、体じゅうから伸びた触手で怪光線を発射して、我々の船を攻撃して来たんですよ!」
船の襲われている映像を流しながら話を続けた。
「仕方なく応戦して二頭を焼き殺した頃には、13名居た乗組員は我々ふたりだけになってました⋯⋯」

わたしの説明に納得した提督は、ようやく地球への上陸許可を出してくれた。
「うまく誤魔化せたワン!」
地球に着くまでに、人間の言語に不慣れなジロを再教育する必要があるなぁ、とわたしは思った──。
SF
公開:19/04/14 22:54
更新:19/04/15 09:38
ショートショートカレンダー 1月14日「タロとジロの日」 用です。すみません。

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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