帰り道の忘れ物

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「ご馳走様」
お侍様はそう言って席を離れ、私はお勘定と皿を回収しに外へ出た。
あら?お侍様ったらお勘定置かずに刀を置き忘れているわ。
「貴方!私、お侍様に刀を届けてくる!」
調理場にいる夫に声をかけ、私は刀を抱いて走った。
「お侍様!忘れ物でございます」
お侍様に追いついた私は刀を差し出した。しかしお侍様は刀を受け取ろうとしない。何故でしょう?
「俺は侍ではない。剣豪という名の人殺しだ。そんな俺がやっと人の心を取り戻したんだ。故郷に帰るのにそれは不要なもの。どうかそれを代金の代わりとしてはくれないか?」
その刀はとても美しかった。私はお勘定の代わりに刀を受け取った。
そしてその刀でお侍様を袈裟切りにした。
「私の父は貴方に殺されました。今、その仇討ちをさせて頂きます」
お侍様が刀を持っていれば、私に勝ち目はなかったでしょう。
故郷への帰り道、私に忘れ物を届けさせたのが運の尽きでしたね。
公開:19/04/14 18:31

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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