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青梅線河辺駅近くに住んで立川の設計事務所に勤めていた頃、毎週日曜日に、東青梅と青梅の間にある青梅市立図書館へ、線路沿いを歩いて往復するのを日課にしていた。
クレマチスとアザミの生い茂る柵沿いを歩いていくと、図書館の手前で道は突然に上り、線路を高架橋で越えるのだが、その渡り終えた所に、六角形の半分の形の出窓が道路に飛び出した、喫茶店「夏への扉」があった。
壁面には、「小学校のクラスみんなで描きました!」みたいな、出窓と黒猫と鷗の絵があって、出窓越しには白い壁と木の床と、大きなテーブルとが見えた。
分厚い美術書を背負って往復するこの日課は3年間続いたが、その喫茶店には入らずじまい。その後僕は、何の資格も取得できないまま実家に戻って、いつの間にか30年が過ぎていた。
『夏への扉 まだやってるよ』
私はあの喫茶店に入ってみたいなどとは思わない。ただ、ただ、妙に懐かしいのである。
クレマチスとアザミの生い茂る柵沿いを歩いていくと、図書館の手前で道は突然に上り、線路を高架橋で越えるのだが、その渡り終えた所に、六角形の半分の形の出窓が道路に飛び出した、喫茶店「夏への扉」があった。
壁面には、「小学校のクラスみんなで描きました!」みたいな、出窓と黒猫と鷗の絵があって、出窓越しには白い壁と木の床と、大きなテーブルとが見えた。
分厚い美術書を背負って往復するこの日課は3年間続いたが、その喫茶店には入らずじまい。その後僕は、何の資格も取得できないまま実家に戻って、いつの間にか30年が過ぎていた。
『夏への扉 まだやってるよ』
私はあの喫茶店に入ってみたいなどとは思わない。ただ、ただ、妙に懐かしいのである。
青春
公開:19/04/16 14:51
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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