無臭の女

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ナンパのキホンは警戒心を解いてやること。正面ではなくサイドから攻めること。共感してやること。ナンパ指南書という本に書いていたノウハウを覚え、俺は繁華街へやって来た。
「ねぇ、パスタの美味しい店あるんだ。行こうよ」
「バーカ、キモオタあっち行ってろ!」
現実は厳しいようだ。


その街に行くとめちゃくちゃモテるようになった。

さっそく前から美女が歩いてきた。艶っぽい女だ。
「ねぇ。暇なの、遊ばない?」
その女と食事をして、ホテルのバーへ行き会話を楽しむ。そして、朝まで……。
そう、俺はモテる男なんだ!
街を歩くと、美女が次々と声を掛けてくる。女にモテる。これこそ男にとって至高の幸せ。
ただ、どの女も匂いがしない。あの女性らしい香りに包まれたいところだが、仕方ない、この街には無臭な女しかいないのだから。

現実は厳しいが、仮想現実は俺に優しいんだよな。俺はVRゴーグルを外して現実に戻った。
その他
公開:19/04/16 12:55

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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