月に住む人

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月に図書館があるんだ。僕の幼馴染みは子どもの頃から図書館が好きで、ついに月の図書館で働くようになった。地上に溢れた本やマイクロフィルム、凡ゆるデータや資料が今は月で保管されている。
ある夏、彼女は月から帰ってきて、僕と湖でボートに乗っていた。子どもの頃に家族みんなで遊んだ避暑地。
夏休みが終われば、彼女はまた月に帰る。いつも目の前に見えるのに、僕はそこへ行くチケットさえ手に入れることが出来ない。
たくさんの資料や眠れる歴史の証人と過ごす日々を彼女は揺れる水面の上でいきいきと語る。僕も、最近まとめた大口の飼料の買い付けの話をした。
違う。こんな話をしたいんじゃない。
彼女の心は、「今」という時間のどこにもない。ボートの上にもなければ、月にもない。
彼女は過去と現在と未来をつなぐ、史料にばかり心奪われている。
時を超えて語り継ぐもの。それを守り、それと語り合うことだけが、この人には愛なんだな。
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公開:19/04/12 16:04
更新:19/04/12 18:06

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