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ざくり。
と、瑞々しい香りを溢れさせながら、オレンジが滴り落ちる。

ざくり。
半分を、三当分に。香りが増した気がした。

白いまな板に、溢れる果汁は、指にまで滴り、そうして、ひやりとした感覚が伝った。

開けた窓からは、青葉の香りがした。
濡れた木々の、そうした世界のにおい。

ふと、聞こえない筈の歌声が聞こえた気がした。

美しい濡れ羽の髪は、しどなくその美しい褐色の肌に触れ、驚くほど長い睫毛が艶やかだった。

ぱちり。
ひと度、その瞳を見てしまえば、あぁ。
…あぁ。

ざくり。
─────異国の歌声が、聞こえる。
指に伝う、果汁をそのままに、オレンジを食めば口に広がる瑞々しい香りと果汁。

「…甘い」

絡み付くそれは、蜜のよう。



「インディアン・オレンジ」
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公開:19/04/14 16:03

なばな


「色」を中心に、小さなお話書いてます。
テーマはいつもどこかに「恋」をすこし。
(Twitter:@na_bana7)
 

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